数年前に自分がまだアメリカ合衆国に住んでいた時、1960〜70年代のミニマル派の音楽、80年代初期のニュー・ウェーブに興味を持った。そ
れらの楽曲が持つ、一定のパルス音、鳴り続けるハーモニー、エンドレスな持続性に惹かれたのである。それらの音楽には粘り強さのようなもの
があり、リスナーは主体的に聴こうとする意識からいつでも解放される一方、音楽やリズムは淡々と鳴っている。そして、そこには心臓音のような、
とてもヒューマンな感覚を覚えるのである。
当時は、このようなアイデアを自分の音楽のインスピレーションとして取り込み、音楽にはテンポを与
え、前向きな新たな方向性を示すつもりであったが、SPEKKでのリリース決定から数年が経ち、自分も他のプロジェクトに関わる中で、当初考え
ていたコンセプトやインスピレーションが自己からすっかり消えていたのである。
そして2013年夏に私の妻との間に最初の子供ができることが発覚し、この辺りから本作Zigzagへの思いが具現化してきた。お医者さんとの
最初のいくつかのアポイントには出席することが出来なかったのだが、ようやく参加したときに初めて赤ちゃんの心臓音を聴くことができた。それ
は、まるで音楽と赤ちゃんの運命的な出会いとさえ思える結びつきで、新たな生命が開始するとき、全ての物事が未来へと進むものである。