本作は、両者それぞれの独と米のスタジオで2007年夏〜2008年秋にかけて制作されたもの。 当初はステファンのソロアルバムとしてリリースする予定だったが、さらなる奥行きを求めた ステファンがテイラーに声をかけ実現したコラボレーション。アルバムのテーマとなっているのは、 ステファンが趣味で所有している古いワックス・シリンダーや78rpmの音源で、 今作の所々にもなつかしい趣きの、主に1900年〜1910年代の音源がアナログ感たっぷりに 聴こえてくる。ワックス・シリンダーとはアナログレコードの元祖となるもので、 1887年に発明された128rpmで走るシリンダー状のレコード。また 78rpmのアナログ盤も、 その頃に発明されたセラックを原料とした円形状のレコードで、現在のアナログレコードの 原型となるものである。いずれもグラモフォン(或はフォノグラフ=現在で言うアナログ・ プレイヤー)と呼ばれる機械で再生されるものだが、ステファンは実際に78rpmをまるでバンド 録音のように2つのポータブルのグラモフォン機で再生/マイク録音し、リアルタイム加工を施し ラップトップに録音。(なおワックス・シリンダーのほうは、再生機を保有していないため知人に 音源を録音してもらう。)ただし録音された音源はレコードの特性上700Hz-4000Mhz間の周波性 でしか再生されないので、より「作品」らしく機能させるためにテイラーに曲を託す。テイラーは 必要な音場を稼ぐために時には大胆にEQをかけアコースティックギターやアナログシンセを入れて ミックス、ステファンもピアノなどを足して加工をくり返し完成させた。その結果は、ステファン 自身が「2つの声が混じり合い、1つの歌を歌えた」というくらい納得の完成度の高い コラボレーションとなる。ちなみにジャケットの写真はステファン撮影による78rpm盤の表面である。