「本作は、私が以前製作したStone’s throwという作品群の中の1つである。彫刻家であった祖母がこの世を去り、ちょっとして
から彼女の工房を訪れ、まだ製作途中の石を持ち帰ったのだが、その未完成の姿は、自然物と彫刻作品の間をさまよっている状態
で、これらの石に触発されStone’s throwの作品作りを始めた。それらはペインティング、ドローイング、彫刻、楽曲、アーティ
ストであるMary Simpsonと一緒に撮影した16mmフィルムにも及ぶ。このフィルム撮影時には、私たちが製作最中の音も録音し
たが、後からいらない事に気づき、最終的には音を含まないフィルム作品となった。しかし、音を鳴らすような動作は、観る側の
脳に音を思い浮かばせることが出来るのである。そして、この時に録音された、猫や犬、撮影時の音(例えば、Maryの話声、私
が石を叩く音、カメラの動作音、シンバルを弾いたりポンと叩いたりする音、石同士をカチカチ鳴らした音等)などのフィールド
レコーディングに、エレキ・ギターの要素を加えたのが、本作Distance Pieceである。そのエレキ・ギター音は、祖母の工房の壁
に貼ってあった彫刻家ヘンリー・ムーア氏のテキストを元にしており、その母音の構造により、どの音を鳴らすか、ということが
決められている。2011年に、これらのフィルムと音作品の両方がニューヨークのSculpture Centerで発表されたが、Distance
Piece(音作品)のほうは美術館の外で鳴らされ、Striationsと名付けられたフィルム作品のほうは、建物の奥の暗いスペースで6
分間のループ映像として、ひっそりと上映されました。」