Room with sky は良く晴れた日にベッドルームで自分の話し声を録音したところから始まりました。 私の家のベッドルームには窓枠がバウハウススタイルの窓があり、そこから南の方角にニューヨーク市が、西の方角には、ハドソン川とその向こう岸のニュージャージーのパリセーズ峡谷が見えます。私が話した言葉は、自覚しながら連続的に直接私の口から出たものですが、しかしながら実際のテキストはコンピューターの破壊的な編集で失われております。
私にとって、この作品の背後に持つアイデアは、聴き手が晴れた日に日当たりの良い部屋にいる様な感覚を伝えることです。私は自分の声の録音をし、それをこの最終系に到達するまで様々な変換を行いました。
Room with skyはStepan Mathieuによりマスタリングされましたが、デジタルからアナログへ、そしてデジタルへと温かみを加えるための変換工程を経ました。
何年もの間、僕は音響作品の中で自分が目指しているアイディアを精錬させてきた。 僕はどんな音が自分の興味を引くのかがはっきりわかっていたし、時間が選択を簡単に してくれてきた。もしアプローチの点で何か変化があったとすれば、録音と操作をアナログ からデジタルに換えたことに伴って起こったものだ。制作方法をアナログテープから コンピュータのみに移行するには少し時間がかかったけれど、今となっては構成のアイディア と、それが実際に形になるまでの時間が短くなっている。
僕の好きな音のいくつかは鳥やこおろぎによって作り出されるもので、たとえこれらの音が 反復的であるからといって僕はそれが単調だとは思わない。ゲートルード・ステインは、鳥の 唄が興味深いのは反復的だからというよりは主張的だからだと言っていたと思う。単調さや 退屈さというのはほとんどがリスナーの気分と期待の問題だ。デジタルカルチャーの出現 により人々は物事をすぐに期待するー音の長さに伴って注意が続く時間も短くなってきている。 期待せずに聞いていれば、物事が起こるのを受け入れることができる・・そしてこういう事が 時におもしろいんだ。
ステファンとは去年の秋に彼がニューヨークの僕の家に来た時に会った。彼の音源を聴いて 僕らには共通の美意識があると思った。そしてそれは当たっていた。" Room With Sky" の リマスターを頼む前に彼とオーディオマスタリングの技術について、何ヶ月も話さなくては ならなかった。限定版が売り切れた後に、Spekkのナオがこの曲をリリースすることに同意 してくれた。僕は少し音をはっきりさせたいと思った。それはステファンがリマスタリングの 中でやってくれた事なんだけど。全ての音がより明瞭に、暖かくなった。
音はOKMII バイノーラルマイクで ラップトップに直接録音した。変形の過程は、ある周波数を取り除くために数多くの選択をし、 その結果生じた自分の声の音を楽器的な特徴を帯びるように変化させ、言葉の実際の意味を 取り除くというものだった。最終的な音にも言葉が持っていた意味のエッセンスが残って いると思いたいけどね。