本作はカナダ在住のマシュー・ラフルマン とアメリカ在住のセラーによる、2組のサウンド・アーティスト達によるコラボレーション作。 1969年のゴルフ湾の資源調査のために航海に出たベン・フランクリン号に捧げる架空のサウンド・トラックで、3つの長編に別れており、 音の進行と共にその航海イメージが曲目に羅列されている。 音のほうは、現在はカナダのバンクーバーにある博物館に屋外展示されて いるベン・フランクリン号にコンタクト・マイクを取り付け、その周りのあらゆる天然素材をこすりつけたり、ワイヤーを取り付けて 録音されたもの、「大航海」をイメージさせる近くの海の音といったフィールド・レコーディングと、「当時の航海によって科学的発展 という役割を果たさんとする人間の熱き想い」や、「航海の思い出」といった情感を表現するために加えられたピアノ、ストリングス、 シンバル、自作装置によるエレクトロニクスを巧みに織り交ぜたもの。特筆すべきは、コンピューターを一切使用していないこと。 その徹底したアナログへのこだわりは作品に絶妙な質感を与えており、また情景描写のために徹底して細部にこだわった作りはこの上 なく精巧で、ヘッドフォンで本作を聴くと、あまりにも凄すぎて気が遠くなる程である。