KK001
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KK001
title:
January
artist:
Taylor Deupree
time:
51' 02"
format:
CD

tracklist

1.
Img_0083
2.
Skimming
mp3
3.
Shibuya_9
4.
Midlight
5.
Quiet_C
mp3

text by Taylor Deupree

January は2003年1月から5月の間に制作されました。このCDへのインスピレーションは12kアーティストのリチャード・シャルティエとSogarとの来日ツアーから現れました。 私達は本当にたくさんの友達を作り、私の最近の思い出の中で、最も楽しく、インスピレーションに富んだ旅となりました。

January は、ループされた旋律の静けさと、変化してゆく反復されない要素をあわせることによって、この旅をおおまかに記録することを試みました。それは、私たちの旅、また時間を永遠のものとしてとらえるというシンプルな比喩です。私達が東京に到着して初めての朝は、とても重たい、そしてやわらかな雪が舞い降りてましたが、その鮮明な視覚的記憶がこのレコーディングにおける粒状のサウンドのインスピレーションになりました。 Januaryは私の多くの作品での実践/コンセプトと同様に、ループや(アルバムStil.で聴かれるような)凍ったようなサウンドをを利用しつつも、生演奏や声のレイヤーが加えられています。 Januaryはライブで処理されたエレクトロニックピアノとSawakoの好意により、声の断片が入っています。このセッションによって、もっと多くの声を使った作品が書かれましたが、最終的に 本作には収録されませんでした。

このアルバムは私の人生にとって、大きな変化と、新たな始まりの時に書かれました。また、このアルバムは2003年2月29日に生まれた私の息子ニコラスに捧げます。


Taylor Deupree interview ( interviewed by Nicola Catalano / z.e.l.l.e )

1. このアルバムは最近のあなたの作品の中でもメロディーを使った形での実験と、プロセスの希薄化を強めたように感じますが、これについてどう思いますか?

ええ、全くその通りです。また、その方向に向かった要因がいくつかあります。その一つには1993年か1994年頃の私の音楽に戻っている感じがすることです。 私が、たくさんのアンビエントやメロディックな音楽を探し求めていた頃に・・。実際にはたくさんのテクノを作りましたが、アンビエントが一番身近でした。また、最近はよりポップなフォームの音楽を聴いておりま。おもにslowdive, Mojave 3などのバンド達、そしていつも聴いているSugar Plantです。 これらのようなメランコリックでアンビエントなインディロックバンド達は私にとって多大な影響を与えています。メロディーや何気ないリズム、もともとリズムのないところで、メロディからつくりあげられるリズムなどたくさんの探究すべきエリアを見つけることができます。そして、私が使うたくさんのソフトウェア技術が、それを可能とするのです。そしてそれはとても興味深いものでした。


2. 同様に際立ったシンプルさと叙述的な姿勢が見えますね。このことに関して確証はありますか?

私はよりシンプルな形を求めています。常に感じることは、私のしていることはいつも混み入り過ぎるということです。たとえ、他のジャンルの音楽やミュージシャンの作品と比較するとそうではないとわかっていてもです。それでも私は更なる簡素性を追い求めています。私の人生はどんどん複雑になっていきますし、世界はさらに渾沌としています。私の作品はそういうことに関しての反応だと思います。それと叙述性についてですよね?それについてはさほど意識的ではないと思います。しかし私の音楽は、自分の人生から描かれていく傾向にあると感じます。そしてそれは、自分にとってとても個人的で重要なことなので、探せば叙述性は存在しうると思います。


3. 日本の経験はどのような影響を与えていますか?つまり、禅の倫理学/美学、伝統的な「音響」について、音と生音の純粋な探究について。。

私は日本の美学にとても興味を持っています。少なくとも禅や詫び寂びについて、そして建築美術における簡素性への回帰についてです。以前、I.M Peiが建築した日本のMiho Museumについてのドキュメンタリーを見たことがあるのですが、最も感動したことは彼らが庭園に一本の木を配置するのに長い時間をかけて考慮する姿で、またそれが周囲の自然や美術館の建物にどの様な影響を与えるかを。彼等はその木が、いかに建物と調和するかや、観覧者がどうその木を見上げるのかということを深く考えていました。このような細かい配慮は単純に西洋では存在しません。日本の建築における美学は、とても自然と共生しているもので、とても考慮されています。しかも、とても高い技術です。Peiは日本人ではありませんが、この事を信念としています。私は彼等が非常にわずかな要素(言葉や音、石などなんでも)で要まで到達させることが出来るプロだと思います。そして私はそれをとても賞賛します。それこそ私が音楽において、求めていることなのです。


4. あなたは本作で生楽器や声の要素を取り入れるなど。所謂デジタル/マイクロサウンドにおける美学から距離を置こうとしているように聞こえるのですが?

私のやっていることはとてもデジタルな要素が強く、作品を完成されるためにデジタル処理を必要とすることについて否定をしません。また私は自分の音楽において、デジタルな要素を排除することにも興味がありません。私の美学は、テクノロジーと自然との共存で、それは努力でもあり共生でもある。最近はより、生楽器の音源に関心を持っています。なぜなら、それはよりこの目標に近づく明確な方法だからです。そして私は生楽器の非完全さにも魅了されています。純粋なエレクトロニクスの潜在的な弱さとは逆に。より低い概念レベルにおいて、私はマイクロサウンドがようやく分岐し始め成熟し、ようやく私達は"マイクロサウンド"のアーティストになるには、ハイピッチのサイン波だけではないことに気付いたと思います。 私達は、経験によって、自分達の人生の違う側面や違う音楽の形式へと重ね合わせたのです。 私の作品が"アンビエント"や"マイクロサウンド"とラベルを貼られても気に留めません。人々の好きなように呼べばいいのです。しかし私はただ、常に新たな手法を探究し続け、私自身の音楽を完璧にする様に努力し、決して到達することのできないこのゴールを目指す事に興味があります。完璧ということはありえませんが、常にそれを追求し努力する気持ちが続けさせるのです。